なぜIllustrator以外のアプリでデータを作るのが駄目なのですか?
ai形式のデータはAdobe Illustratorでしか作成できないため(もしあれば教えてください)、eps形式に絞って説明させていただきます。
eps形式はIllustrator以外のアプリケーションでも作成が可能なデータ形式です。ベクターデータを扱えるデザイン系アプリでは、Inkscapeが有名ですので、Inkscapeで作成したデータを元に検証を行いました。
テスト環境
- Mac OS 12.1
- Illustrator 2022(26.3.1)
- Inkscape 1.1.1 (c3084ef, 2021-09-22)
- Bridge 2022(12.0.2.252)
検証1
1-1. Inkscape(フォントを埋め込む)
こちらがInkscapeで作成したデザインです。デザインにあるとおり、「アウトライン化済」はフォントはアウトライン化済みで、「未アウトライン」と書かれているオブジェクトはアウトライン化していません。いずれもアートボードからはみ出しているオブジェクトがある状態で保存しました。
保存はeps形式で「フォントを埋め込む」設定としました。
epsで保存後、Inkscapeを閉じようとすると、「ファイル”inkscape_sample.eps”は、データの損失を起こす可能性のあるファイル形式で保存されています。このファイルを Inkscape SVG 形式で保存しますか? 」と警告が表示されました。どうやらInkscape側もepsの保存に消極的なようです。それでは保存したデータをIllustratorで開いてみます。
1-2. Illustrator
Illustratorで開いた状態です。アートボードが横長だったのが縦長になっており、デザインも一部欠けています。しかしデータを開く際にエラーは表示されませんでした。
クリッピングマスクが掛かっていたため、すべて解除しましたが、一部は完全に欠損しておりInkscapeと同じデザインを表示することができませんでした。
1-3. Bridge
一体何が起こっているのか、Adobe Bridgeで詳しいファイル情報を確認しました。
Inkscapeで作成したepsの詳細情報です。「アプリケーション」の項目がInkscapeではなく「cairo 1.16.0」となっています。
新たにIllustratorで作成したepsをBridgeで開きました。こちらは「アプリケーション」はAdobe Illustrator 26.3となっており一致しています。
1-4. Inkscape
Inkscapeで作成したepsデータをもう一度Inkscapeから開いてみました。
しかし開くことができませんでした。先程、epsを保存する際に「損失する可能性がある」と警告が出ましたが、当のInkscapeですら開けなくなるとは思いませんでした。
検証2
2-1. Inkscape(テキストをパスに変換)
検証1と同じデザインですが、保存方法を少し変更しました。
検証1では「フォントを埋め込む」だったのを「テキストをパスに変換」に変更して保存しました。これですべてのフォントがアウトライン化された状態で保存されます。ファイルを閉じる際に検証1で表示された警告は同じく表示されました。
Illustratorで開いた状態です。検証1と同じくデザインが欠けてしまっています。
クリッピングマスクをすべて解除しましたが、やはり完全に欠損している部分があり、復元できませんでした。
Inkscape
こちらもInkscapeでは再度開くことはできませんでした。
おまけ
Inkscape(SVG)
警告に表示されていた内容からsvg形式で保存してみました。上図はInkscapeの画面です。
Inkscapeで保存したsvgをIllustratorで開いてみました。アートボードの横長は維持されており、アートボードからはみ出て欠損していた部分も問題なく表示されています。
まとめ
- Inkscapeでeps形式で保存したデータをIllustratorで開くとデザインが欠損してしまう(エラーメッセージも表示されない)
- Inkscapeで作成したepsデータが再度Inkscapeで開けない
- svg形式であればInkscapeとIllustratorで互換性がある(かもしれない)
このようにIllustratorとInkscapeではデザインの欠損が見られ、エラーメッセージが表示されないなど、Inkscapeで作成したepsをカッティングシートのデータとして使用するには致命的なことがわかりました。
実際のカット作業はIllustratorを使用して出力を行うため、Illustratorで正常に表示ができないデータは承ることができないため、ai、eps形式の場合はIllustratorで作成されたデータのみの受付とさせていただいております。最後のおまけに書いたsvgも対応できれば良いのですが、svg形式はInkscapeだけではなくもっと多くのアプリで作成ができるため不具合が起こる可能性が大きく、対応しておりません(2022/07/14現在)。
これらは正常に、正確に、入稿されたデザインを再現するための決まりごとです。何卒、ご理解の上ご利用いただけますと幸いです。
装飾用シートの代表的製品である「カッティングシート®」は中川ケミカルが商標登録していますが、今では一般的名称として浸透しています。中川ケミカル社の公式サイトより引用
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上記の解説から、この記事ではカッティングシート ≒ カッティングシートや一般的な装飾シート(リメイクシートなど含む)として解釈し執筆しています。
